東京のここが素敵3選

井上 美穂
withコロナ

みなさん、自分の街は好きですか?

生まれ故郷と今住んでいる場所は違いますか?

筆者は関西生まれの東京在住です。

筆者はこうして住んでみて、改めて感じていますが東の方が水が合うようです。 自分が繊細な気質の持ち主だからというのもあるかもしれませんが、東京のよそものひしめく この距離感が筆者的には踏み込まれすぎず、ちょうどよく感じます。

そんな筆者が独断と偏見で綴る東京のここが素敵ポイント、ちょっとマニアックなものもかなり 含まれますが3個に絞ってご紹介して参りましょう!

その①日本の歴史が詰まっている

初っ端から抽象的ですみません。

歴史なんて日本中どこにも詰まっているだろう!と思ったと思いますが、なんというのでしょうか、 急発展の爪痕がそこかしこに残っているなとこの街にいると感じるんです。

例えば鉄道。

もう網の目ではきかないくらいに工事を繰り返してダンジョンですよね。主要駅のA出口からB出口まで20〜30分かかるとか結構あります。ネガティブな意味で捉えられることが多いポイントなんですが、筆者はここにどうにもエモさを感じてしまいます。

地下道を歩いていると本当にまるで歴史が止まったような場所を通過することが多々あって、そんな時、体感的には令和ではな く、まるで昭和の東京を歩いているような気分になります。

むき出しのパイプや石造りの道。 ひとつ作ったと思ったらもう次が来たのでしょうね。 急にある場所から明らかに壁のテイストが変わるのでまるで断層の中を歩いているかのようです。

そんなちょっと無茶とも言えるような発展を繰り返してきた痕跡を見ていると、ただ歩いているだけでかつてそこに生きていた人の空気を 感じてしまい浪漫につい、浸ってしまいます。

その②タイムスリップしたような場所が多い

東京を舞台にしたファンタジー作品が多いのってこれが理由じゃないかと思ってしまうのですが。

その1にも若干絡んでくるんですけど、この街はある時期にいきなり発展した場所というのが点在しています。

例えば渋谷は銀座線の駅が新しくなったり、渋谷スクランブルという高層ビルが建ったりしていかにも栄えた都市なんですけど 少し歩くと急に木造の平家が出てきて、お野菜をかごで売るような八百屋さんが現れたりします。 まるで昭和の街にタイムスリップしたみたいにそこだけぽっかりと時代が変わってない場所が本当にそこかしこに突然現れる。

この急に時代が変わる街並みに出会うたびに、「すごく頑張って発展してきたんだろうな」「世界に追いつこうと必死だったんだろうな」とついつい、その背景にエモさを感じずにいられません。

筆者は「東京幻想」という東京のあちこちを廃墟にしたコンセプトのイラスト作品が大好きなのですがそのインスピレーションってこういう場所から来てるんじゃないかな、って思ったりします。

その③目的意識の高い人が多い

夢追い人の集まる街、と詩的に表現すれば素敵に聴こえますが、誘惑と詐欺が多くそこから大転落してしまう危険も多いという 意味ではあまりポジティブに捉えられるものではないかもしれません。

ただ、今追ってる途中の人も、夢破れて生きている人も共通して言えることとして、みんな人生に向き合おうという眼差しを持っていて その眼差しが素敵だな、と感じることが多々あります。

先見の明がある人から言わせれば愚かなのかもしれません。そんなのうまく行かないことはわかってたことでしょう、という人はきっといくらでもいると思います。

でも、愚かでも挑戦してみて現実を思い知ることと、最初から無難な道をとって上手に生きること。 どっちがいいかを天秤にかけてみて、前者をとった人と一緒にお酒を呑んでいると不思議と人生捨てたものじゃないな、という謎の勇気を 貰うことが多々あります。こんな素敵な大人って多分、他地方にもいるでしょう。ただ、東京はいかんせんその数がものすごく多くて、これまた妙な場所で出会います。

ドラマみたいな話ですが、吉祥寺の焼き鳥屋で一人で呑んでいたら、いきなり焼売をくれたおっちゃんがいました。

「ねーちゃん、これ食べたことある?この店来たらこれ食べないともったいないよ」

そう言って1つ残った焼売をくれて、酔っ払ってたこともあって急に身の上話が始まりました。

そのおっちゃんは元役者で、詳細は端折りますが結構いいところまで頑張ってたそうです。 ただ、とあるオーディションで急に雷に打たれたように「自分は役者じゃもう食えない」と思い知ったのだそうです。

これまでも幾度となく落選してきてその時は何くそ根性で頑張ってきたけど その時、周りのライバルたちをふと見渡した瞬間、急速に現実が見えたのだと。 でも、ある時期、全てを芝居に捧げた経験は決して無駄にならない。生きる活力に今でもなっている、という話を語っておられました。

おっちゃんの今の仕事が何かはわからないけど、筆者はなんてかっこいい大人だろうと感じました。

最後は照れ隠しなのかエロい話しかしなくなったのですが、この人の言葉にものすごく力をもらったおかげで私は擦り切れそうになっていた自分をなんとか立て直し、舞台を1本しっかり演じ切ることができました。

ハリボテの向こう側にたくさんの幻想を抱えた街

こう書くと、「お前、本当は東京のこと、嫌いなんじゃないのか」と言われるかもしれないのですが。

筆者は東京ってハリボテの街だと思っています。

ニュースで見る場所なんかはもう技術の粋を集めて美しく近未来都市のように作られていますが、ちょっと角を曲がれば 全然、昭和初期で、なんとアンバランスな発展の仕方をしてるんだといつもびっくりさせられます。

お世辞じゃなく、地方の方がよほどバランスよく発展しているんじゃないでしょうか?

でも、その危うさの向こう側に、なんとも言えない人の想いをたくさん垣間見ることが多々ある。

美しいものも、醜いものももう、一緒くたなのですがその泥の中から蓮の花が咲きやしないかなとつい願ってしまう。

なんとも切ないエネルギーが詰まっている気がするのですよね。 不思議な魅力をたたえた街、それが東京だなと筆者はいつも思います。